不動産相続について調べていると「相続登記を行うべき」という文言を目にすることが多いのではないだろうか。
実は相続登記を行うことで、数多くのメリットを享受できるのだ。
本記事では相続登記について、メリットやデメリット、必要になる場面などを紹介していく。
- 費用は?
- しないとどうなる?
- 登記の決め方は?
上記のような疑問を解決できる記事となっている。
相続登記とは
相続登記とは、相続した不動産の名義を変更することを指す。
2022年現在は登記するか否かは自分で決められるが、2024年以降は義務化されるため注意していただきたい。
義務化について詳しくは「相続登記の義務化で罰則対象拡大!いつから?意外と知らない罠5つも」で紹介している。
既に不動産を相続した人も登記義務が課されるので、相続した人は必ず確認していただきたい内容となっている。
必要になる理由
相続登記が必要になる理由として主に以下の4つが挙げられる。
- 売却ができない
- 勝手に売却されても文句が言えない
- 他の相続人の借金で差し押さえられる可能性も
- 誰が相続したか分からなくなる
主に手続き面のスムーズさを求めたり、その後発生し得る多くの不利益を回避したりするために行われることが多い。
売却などできない
亡くなった人が名義人のまま土地や家を放置してしまうと、いざという時に売却ができない。
相続後、売却したくなっても再度登記手続きを行わなければならない。
そのため売却予定が少しでもある方は必ず登記をすることをおすすめする。
さらに、不動産を担保にした資金調達も名義人できなければ行えない。
不動産を活用して事業などを行う際にも、名義人が異なると不利益が生じることもあるのだ。
勝手に売却されても文句が言えない
登記手続きを行わなかった土地は、相続人全員の共有財産となり、各相続人に共有持分が割り当てられる。
そのため、他の相続人が自分の共有持分を勝手に第三者へ売却していても文句が言えない。
登記手続きをしていないまま兄と弟で土地を保有していた。
この時に弟が不動産会社へ共有持分を勝手に売却しても文句は言えない。
上記のケースでは、さらに兄に不動産会社が土地の売却を進める話し合いを持ちかけ、難航すると不動産会社が訴訟を起こしてくるケースもなくはない。
もし保有者が第三者への売却を済ませてしまった場合、優先されるのは第三者となる。
借金で差し押さえられる可能性もある
複数人で相続し、不動産を共有で登記していた場合に発生しうるリスクである。
もし自分以外の相続人の誰かが借金を負って返済できなくなった場合は、資産である不動産が差し押さえられてしまう。
さらに相続人が認知症になった状態での登記は、代理人を立てなければならないので手続きが長期化しやすい。
その間に借金を背負って差し押さえられるリスクも高まっていく。
だからこそ、差し押さえリスクを軽減できる登記が重要なのだ。
誰が相続したか分からなくなる
名義人を変更しないと、まだ亡くなった人のものである状態なので名義人を調べる際に手間がかかる。
登記手続きが遅れるにつれて、子供、孫、ひ孫など相続権を得られる対象者は増えていく。
共有財産状態であるために、最初数人しかいなかった相続人が、数十人単位で増えていってしまうのである。
この状態になると、調査にもより多くの資金がかかってしまう上に、親戚同士の争いにも発展しかねない。
登記するメリットデメリット
メリット
登記するメリットとしては、全体を通して自分の権利を主張できることであろう。
自分の権利を視聴できることで以下のような対応が可能となる。
- 不動産を自分の好きなタイミングで売却できる
- 金融機関から不動産を担保に融資が受けられる
- 相続関係が明らかになる
- 不動産賠償を受けられる
相続権の複雑化を防止でき、資産として幅広い活用が可能となる。
土地や建物が損害を被った際、不動産の名義人に対して損害賠償がなされることもある。
当然、登記をしていないとその賠償も受け取ることはできない。
デメリット
登記をするデメリットとしては、手間と時間、費用がかかることである。
登記を行うためには以下の手続きが発生する。
- 法務局での手続き
- 複雑化した場合の専門家への依頼
- 登記決定の話し合い
登記を行うためには相続人全員の合意が必要となるため、もし相続人の1人が認知症になった場合は別の代理人を立てなければならない。
複雑化した登記は完了までに数ヶ月以上かかる場合もある。
そのため、時間と手間がかかる前提で早めに取り掛からなければならない。
手続き方法について詳しくは「相続登記の必要書類を一挙解説!手続き方法・期限・費用をチェックして正しい申請を」で紹介している。
さらに登記は無料では行えない。
最低でも、登記時に支払う登録免許税等で数万、提出する書類(固定資産評価証明書と戸籍小謄本)の取得で1,000円程度は必要となる。
専門家に依頼する場合は、そこからさらに10万円ほどかかってしまう。
登記するパターン
登記するパターンとして相続人が1人か複数人かで動きは変わる。
相続人が1人
相続人が配偶者、もしくは子供1人だけであった場合そのまま登記へ進んで問題ない。
相続人が1人の場合、話し合いの場を設ける必要がない。
すぐ登記手続きに移行できるため非常にスムーズだ。
相続人が複数人いる
遺産を相続する権利がある人(法定相続人)が複数人いる場合には、話し合いの場が必要となる。
遺言で決定
最初に遺言書の有無を確認しなければならない。
遺言書があった場合は、遺言書の内容を優先して登記手続きを行う。
例えば「配偶者へ全て相続させる」旨が書かれていれば配偶者が不動産を相続し、配偶者自身が登記手続きを行わなければならない。
遺産分割協議で決定
遺言書がない、もしくは遺言書に異議がある時は、相続人全員が集まって遺産分割協議という話し合いの場が設けられる。
この場で家や土地をどのように分配するのかが決められる。
話し合いの結果、相続することになった人全員が登記手続きを行うことになる。
もし遺言書で「長男に不動産を全て与える」旨が記載されている場合、配偶者や子供などは一定額受け取る権利を主張できる。
いくらもらえるかは「相続で知っておくべき遺留分とは?対象範囲・計算例・法定相続分との違いをわかりやすく解説!」で詳しく紹介している。
法定相続分で決定
遺産分割協議で話し合ってもどうしても決まらない場合は、法定相続分で遺産を分割して登記することになる。
法定相続分とは法律で各相続人がどれぐらい相続するか定められている目安のことを指す。
詳しい割合については「自分の相続割合は?パターン別・ケース別に計算方法をご紹介!」で紹介している。
もし以下のように話し合いが複雑化しそうな場合、弁護士などの専門家の介入も検討しておこう。
- 仲が悪く言い争いが絶えない
- 「長年世話してきたのに相続分が少ない」と不満が出ている
- 連絡が取れずそもそも話し合えない
弁護士に相談するケースは「相続で弁護士は必要?相談すべき人・ケース別費用をまとめて解説!」で紹介している。
よくある質問
登記期限はある?
2022年現在は登記期限が定められていない。
しかし2024年以降は3年以内の登記が義務化されるので、登記をしなければならないと思って差し支えないだろう。
もし不動産を相続したくないと考える場合は、3ヶ月以内に放棄しなければならない。
不動産相続の可能性がある方は、放棄するかどうかをあらかじめ決めておこう。
放棄で発生し得るデメリットは「相続放棄のデメリット・メリットは?後悔・損しないための注意点7つ!」で解説している。
メリットとデメリットを理解した上で、総合的に判断することをおすすめする。
もし放棄しないのであれば、必ず手続きを済ませておこう。
どこで行う?
法務局で行う。必要書類を集めて法務局へ提出すれば完了する。
郵送や窓口対応があるので、行いやすい方を選んで問題ない。
登記しなくても住める?
登記しなくても住み続けること自体は可能だ。
しかし売却したいときにすぐに売却できないなどのデメリットが発生するため、登記せずに居住し続けるのはあまりおすすめできない。
生前に登記できる?
可能だ。
しかし税金面で不利になる可能性もあるため、よく考えて登記しなければならない。
例えば、親が子へ生前に家の名義を移したい場合もあるだろう。
その際は相続時精算課税制度など贈与税を軽減できる制度の活用も視野に入れることとなる。
詳しい制度の手続きと注意点は「相続時精算課税制度の必要書類を簡単チェック!手続き方法、期限も」で紹介している。
いくらかかる?
土地によって増減するが相場は10万円程度、専門家に依頼すればプラス10万円程度必要になる。
ちなみに登記以外に、相続が発生したタイミングでも相続税がかかるケースもあるので注意していただきたい。
なお相続税は10%から最大55%まで課税される。
自分にいくら相続税がかかってくるのかというシミュレーションは「相続税の計算シミュレーション!具体例付きでわかりやすく解説!」で紹介している。
なにか準備は必要?
手続き書類を準備しておくと良いだろう。
不動産登記には相続人説明図を作成しておくとスムーズに手続きが行える。
詳しくは「相続関係説明図をかんたん作成!使用目的・書き方・法定相続一覧図との違いを解説」で紹介している。
もしくは遺言があるかどうかを前々から確認しておくのもおすすめだ。
まとめ
相続登記は現時点では義務では無いものの、基本的にした方が良い。
登記によって、自分の権利を主張できるだけでなく発生し得る不利益から自分を守ることができるのだ。
義務化されるため、早めに法務局へ手続きを済ませるようにしよう。
ただし登記を誰が行うかは、遺言の内容を元に相続人全員で遺産分割協議にて決めていくことになる。
話し合いが複雑化した場合は、専門家への相談も視野に入れてみてはいかがだろうか。
どの専門家へ相談したら良いかは、トラブルごとに相談先を記載した「相続相談先はどこにすべき?よくあるトラブル別一覧表と費用削減のポイント」を参考にして選んでいただきたい。
なお不動産相続は預貯金を相続した時よりも手続きが複雑化する場合も多い。
そこで不動産相続の流れを確認し、逆算して早めに対処していくように心がけて欲しい。
なお相続全体のスケジュールと期限も確認しておくと良いだろう。