相続が発生した際に、弁護士に相談すべきか否か迷ってしまう人は少なくはない。
相談すべきケースと不要なケースをあらかじめ確認しておくことで、相談の手間や費用を抑えることができる。
本記事では弁護士へのよくある相談内容、相場を紹介している。
- 弁護士が活躍できる範囲はどこまでか
- 何を準備しておくのか
- 安く抑える方法はあるか
上記についても解説しているので、弁護士へ相続の相談を検討している方はぜひご覧いただきたい。
利用のメリットデメリット
弁護士に相談するメリットとデメリットは以下の通りだ。
メリット | デメリット |
---|---|
手続き、対処が正確 安心感がある | 費用がかかる 弁護士を探さなければならない |
メリットとしてはやはり専門家がついている安心感があることだろう。
弁護士は法律のプロなので、相続トラブルが発生しても対処してもらえる。
また「相続争いが複雑化した」「そもそも相続をするかどうか迷っている」などのケースで、個人に合わせた最適なアドバイスもしてくれるのだ。
また相続等では正確な手続きが必要となってくるため、専門知識がある弁護士に相談することでミスを減らせる。
反対に費用がかかってしまうのが1番のデメリットだ。
弁護士事務所ごとに料金体系が異なるので、安く抑えたいならいくつかの弁護士事務所を比較しなければならない。
また信頼できる弁護士かどうか、相性が良いかどうかなどを見極める必要がある。
相続時の弁護士について
弁護士へ相談するべきか、相談不要のケースは以下の通りだ。
相談するべきケース
サポートが欲しい
相続が初めてで不安な場合やサポートが欲しい場合に相談を検討すべきだ。
- そもそもどのような手続きをすべきか
- 相続財産がいくらあるのか調査してほしい
自分が不利益を被らないように、相続手続きをサポートしてもらえる。
トラブルが発生している
遺産分割協議が進まず相続トラブルになった時に有効だ。
遺産は「遺産分割協議」という話し合いで分けていくケースが多いが、なかなか話がまとまらずにトラブルへ発展するケースも少なくない。
- ある特定の相続人と折り合いがつかない
- 自分の取り分を主張して譲らない相続人がいる
上記のような場合は、弁護士が介入することでスムーズに協議を進められる。
亡くなってからは葬儀や各種手続きでバタバタするため、身内同士の揉め事はなるべく避けておきたい。
そんな時は弁護士へ相談して対応を仰ぐことで、トラブルに悩まされないよう適切に対処できるのだ。
相談不要なケース
トラブルなくスムーズに話し合いが進んだ
既にトラブルなく遺産分割協議が終了しているのであれば、相談は不要だ。
遺産分割協議は、相続人を判断して相続割合を決めるだけなので、シンプルな相続であれば専門家の介入が必要ない。
むしろ自分たちだけで進めた方が、時間がかからずスピーディーに終わらせられる場合もある。
相続人が誰かを判断するには「相続順位はどうやって決める?当てはめるだけでわかるケース別の具体例」、どれぐらいの割合で相続するかは「相続相談先はどこにすべき?よくあるトラブル別一覧表と費用削減のポイント」で紹介している。
一度相続人の決め方と割合について確認しておき、それでも分からなければ相談を検討しよう。
遺産がない
被相続人(亡くなった人)が残した遺産が少ない場合は弁護士への相談は不要であろう。
相続税が発生する可能性も低いため、比較的シンプルな手続きになる。
ただ、遺産がほとんどないから相続を辞退したいという方は別に相続放棄手続きが必要となるため注意しておこう。
ちなみに相続放棄も基本的にシンプルなケースなら自分で行って問題ない。
専門家に相続放棄手続きを頼むかどうかの基準は「相続放棄手続きは自分でやる方がいい?専門家に頼む場合と徹底比較!」で紹介している。
弁護士の対応範囲外の相談
対応範囲外の相談を行っても、別の専門家を紹介されることになるので弁護士の対応範囲外の相談を検討している人は相談不要である。
専門家に相談する場合は、その専門家の得意分野や対応範囲の相談を行うことが大切だ。
そのため不動産登記等を行う際は、弁護士ではなく代理権を持つ司法書士へ相談することがほとんどとなる。
登記自体についての基礎知識は「相続登記とは?メリットデメリット・費用・しないとどうなるか詳しく解説!」で紹介している。
また書類だけ取ってきておいて自分で作成したいなどという場合は行政書士にお願いすることで依頼費用を抑えられる。
不動産登記については義務化されているのでこれから相談が増えていくケースも多いだろう。
登記に関しては弁護士に相談しても司法書士を紹介されることも少なくはない。
そのため、あらかじめ活動範囲を考慮して相談するべきである。
ちなみに不動産登記については「相続登記の義務化で罰則対象拡大!いつから?意外と知らない罠5つも」で紹介している。
活躍範囲
弁護士が活躍できる範囲として主に以下の5つが挙げられる。
- 遺産分割協議
- 遺留分侵害額請求
- 相続放棄
- 寄与分
- 遺言書関連
遺産分割協議
誰がどれぐらい遺産をもらうのか話し合う「遺産分割協議」の際に弁護士が活躍する。
話し合いで揉めた場合の適切な対処法や代理交渉も行ってくれるのだ。
さらに遺産分割協議の結果、どのような配分で誰が相続するかを表す遺産分割協議書を作成してもらえる。
もし遺産分割協議で決まらなければ、家庭裁判所での遺産分割調停や審判手続きも行ってくれる。
つまり、複雑なトラブルになればなるほど弁護士の活躍範囲が広がるのである。
遺留分侵害額請求
相続人が最低限保証されている金額以下しか相続できなかった場合は、権利が侵害されているとして「遺留分侵害額請求」を行うことが可能だ。
この請求方法は自分で行うことも可能であるが、簡単に言えば「私がもらえるお金をあなたが受け取っているので返して欲しい」と伝えて話し合うことになる。
直接伝えづらい方は弁護士を介した方が心理的負担も少なくなるのではないだろうか。
もし自分に遺留分があるかどうか確認したい場合は「相続で知っておくべき遺留分とは?対象範囲・計算例・法定相続分との違いをわかりやすく解説!」で紹介している。
相続放棄
相続権利を放棄する手続きも弁護士の対応範囲である。
被相続人に負債が多かった場合、相続してしまうと借金返済義務が課される。
そのため、支払い義務から逃れるために相続放棄を検討する人も少なくない。
相続放棄については「相続放棄とは?基本情報をわかりやすく解説!自分は検討すべきか確認しよう」で紹介している。
ちなみに遺産がいくらあるのか、相続人は何人いるのかなどの調査も行ってくれる。
遺言書関連
遺言書作成も弁護士に相談することができる。
さらに遺言書が偽造されたものではないと証明をする検認も行ってくれる。
遺言がある場合、遺言を執行する者として執行者を選出する必要があるがそれも弁護士が対応してくれる。
寄与分
- 家業を手伝っていた
- 介護をしていた
上記のような方で他の相続人より取得財産を優遇して欲しい場合は寄与分を請求することになる。
この寄与分請求も弁護士の対応範囲内だ。
寄与分とは親の介護など生前に資産増加や維持に大きく貢献した相続人がより多く獲得できるような制度である。
「自宅介護を長年していたのに、他の相続人よりも少ない金額しかもらえなかった」など不平等な相続が発生した場合にも弁護士は活躍する。
弁護士以外の相談先
前述した以外の分野で相続に関する相談をしたいなら、以下のように目的に合わせて弁護士以外の相談先を探さなければならない。
- 税金のことなら税理士
- 不動産関連は司法書士
- 書類を用意してほしいなら行政書士
上記以外にも相談先はあるので、相談内容に合わせて専門家を選んでいこう。
よくある相談内容ごとのおすすめの相談先早見表は「相続相談先はどこにすべき?よくあるトラブル別一覧表と費用削減のポイント」で紹介している。
どの専門家に相談すべきか分からない方は、是非活用いただきたい。
費用
弁護士への依頼費用は主に大きく5つに分かれる。
- 相談料
- 着手金
- 報酬金
- 実費手当
- 手数料
相談料
弁護士への相談費用である。
30分ごとに5,000円から2万円程度で設定されており、事務所によっては初回無料のケースもある。
また相談して契約まで至った場合は相談料が無料になる料金体系を設定している事務所もあるため、いくつか事務所を比較・検討することが重要だ。
着手金
弁護士に相談した際に実際に着手してもらう前で支払うような費用を指す。
着手金は相談内容によって異なるが、最低でも20万円程度はかかる。
報酬金
報酬金は無事に依頼が終わった際に最終的に支払う費用のことだ。
金額は、相談者が得られた金額(利益額)の何%などで設定される。
前述した着手金と報酬金の相場表は以下の通りだ。
獲得利益 | 着手金 | 報酬金 |
---|---|---|
300万円以下 | 8% | 16% |
300万円~3,000万円 | 着手金5%+9万円 | 報酬金10%+18万円 |
3,000万円~3億円 | 着手金3%+69万円 | 報酬金6%+138万円 |
3億円以上 | 着手金2%+369万円 | 報酬金4%+738万円 |
実費手当
実費は書類を取り寄せた場合の郵便料金、印紙代、交通費が含まれる。
手当は遠方へ出張した場合の費用が該当する。
往復時間などで決められており、数万円程度が相場である。
手数料
弁護士が手続きを行う際の手数料を指す。
手数料は数万円から数十万円程度と、依頼内容によって差がある。
相場具体例
事務所ごとに側は異なるものの、日本弁護士協会連合会が定める基準を元に設定されていることが多い。そのため今回はこの基準を紹介しながら、実際に依頼した場合の相談ごとの相場を紹介していく。
遺産分割協議
遺産分割協議書の作成は10万円から30万円程度が相場である。
作成でなく協議を行ってもらい遺産を獲得した場合は、支払う額が増加する。
遺産分割協議で200万円得られた場合の費用例
相談料:0~5,000円
着手金:16万円(利益額の8%)
報酬金:32万円(利益額の16%)
実費手当:出張なしで1万円程度
手数料:異なるので省略
遺留分侵害額請求
内容証明郵便の送付だけであれば5万円程度である。
相続放棄
相続放棄に関しては手数料として10万円程度、もし財産調査や相続人調査行う際は5万円から10万円程度の加算料金が発生する。
遺言
遺言の作成は10万円から20万円が手数料の相場で、公正証書にする場合はプラス数万円加算される。
遺言の執行に関しては遺産総額によるが30万円程度が相場である。
遺産額が上昇するに従って手数料も相場も上がっていくので注意していただきたい。
よくある質問
確定申告で経費にできる?
弁護士への依頼費用を相続税申告時の経費にはできない。
そのため弁護士に依頼したからといって、その分相続税が安くなるわけではないため注意していただきたい。
詳しい相続税の計算方法は「相続税率は最大55%!軽減ポイントは二次相続対策の有無!」で紹介している。
自分が相続税が発生するか否かを確認したい場合はこちら「相続税の税率早見表!贈与税とどちらがお得?計算方法を一挙解説【2022年最新版】」をご覧いただきたい。
準備しておくことはある?
準備しておく内容としては遺産総額、相続人数の把握、相談内容の整理だ。
ただ財産の総額は貯金だけではなく負債なども含むので注意していただきたい。
相続の対象となる遺産については「相続時に税金がかかる財産とかからない財産は?一覧表で相続財産の計算方法を解説!」で紹介している。
遺産総額を確認したい方はご覧いただきたい。
誰が払う?
弁護士費用は依頼した人や請求の申し立てを行った人、遺言を作成する場合は遺言を作る遺言者が負担する。
ただ遺言執行費用に関しては相続人全員が負担しなければならないので注意していただきたい。
安く抑えるなら?
安く済ませる場合、自分でなるべくできることを済ませておくと安く抑えられる。
必要書類を揃えたり、財産の総額を確認したりすることで、想定内の費用での依頼が可能だ。
特に必要書類はなるべく揃えておくことをおすすめする。
相続全般の必要書類はこちら
相続不動産登記に必要な書類はこちら
相続放棄に必要な書類はこちら
高額な一括贈与を非課税にする相続時精算課税制度の必要書類はこちら
それぞれ申請予定の書類を確認して、相談前に取得しておこう。
まとめ
弁護士は法律関係だけでなく、相続時の必要書類を作成してくれるなど活躍範囲が広い。
もし相談するかどうか迷っている場合は、トラブルの発生有無で判断すると良いだろう。
トラブルが発生せずに無事に遺産分割協議などの話し合いが終わった場合は、無理に相談する必要はない。
しかしトラブルが発生しそう、もしくは既に発生してしまった場合は速やかに弁護士へ相談すべきだ。
相談する場合には、必要書類を揃えておくことで弁護士に依頼する範囲を狭められるので費用を抑えられる。
現在相談を検討していない人でも、万が一相談することになった場合に備えて、早めに書類を準備しておくのをおすすめする。